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Columnin the Roughの思いや活動をコラムで綴ります

書家 平野燿華さんインタビュー「筆と墨で心を表現する」第2回(連載全4回)

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9月10日から10月2日までIn the Roughで個展「時(とき)」を開催する書家、平野燿華さんへのインタビュー。前回は、書で思いを表現することになったきっかけと、その奥深さを教えていただきました。2回目となる今回は、これまでの平野さんの作品と、そこに込められた思いを伺います。

→第1回から読む

第1回個展「つながる」2004年9月

2003年にドイツ留学から帰国して、就職のために上京しました。大学は仙台だったので、初めての東京暮らしです。

上京して間もない頃、大学の先輩に連れられて、さまざまな職種の方が集まるダイニングバーを訪れました。そこである人に、「あなたのキーワードは何ですか?」と問われました。自分のキーワードなんて今まで考えてみたこともなかったのですが、とっさに「ドイツ・うに・書道」と答えました。

もちろん「ドイツ」は、貴重な留学経験のこと。「うに」は、そのころ実家で取り扱っていて、何か人を集めるようなコンテンツにできないかと考えていたから。そして「書道」は、まだ結果を出せたわけじゃないけれど、いつか仕事にしたい、これが自分を表現する手段だ、と思ったからです。このとき、書道に自分の人生を捧げることを心に決めましたね。

それからは、会社勤めをする傍ら、書くことを中心にした日々を過ごしました。自分の書いた思いをブログに投稿することが日課で、溢れる思いをどのように書に落とし込むか、そのことで頭がいっぱいでした。

こうした日々のなかでご縁がつながり、初めての個展を開く運びとなりました。個展「つながる」は、上京後につながった人々への思いをテーマにして作品を作りました。字体は古典的な要素が強いですが、墨の色を変えたり、ひとつの作品に違う墨を使ったり、写真を和紙に印刷したりと、冒険した部分もあります。

作品紹介

書家  平野燿華さんインタビュー「筆と墨で心を表現する」第2回(連載全4回)

「繋」

個展テーマの「つながる」をさまざまな字体で。書の世界では、背景をつけることはあまり一般的ではないのですが、墨の滲みや曲線で背景を形作りました。

書家  平野燿華さんインタビュー「筆と墨で心を表現する」第2回(連載全4回)

「形影一如」

影と形は表裏一体。ひとつの事象は、いろいろな物事がつながって出来ていることを表現しました。

書家  平野燿華さんインタビュー「筆と墨で心を表現する」第2回(連載全4回)

「命」

筆の先が割れて使えなくなった筆を、捨てるのではなく何かにつなげるとしたら……。考えた末に、割れたからこそ出せる線を出してみたいと、油絵用のキャンバスに書いた実験的な作品です。

自作の詩を筆で書いた作品もあります。作品画像がないのが残念ですが、この当時の気持ちをよく表しています。

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つながる道

今 私がいる場所から

たどりつく地は見えない

けれど私には進みたい道がある

私が決めた道

その先へ続く道

歩をゆるめることも

立ち尽くすこともあるだろう

それでも前へ前へと足を出す

そうしてどこまでもつながる道を行く

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この頃は本当に表現することに貪欲な時期でした。
素敵な出会いにも恵まれ、私の新しい書道生活は良いスタートを切ることができたのです。

第2回個展「ぐるぐる」(2007年6月)

次に個展を開いたのは3年後。この頃は、書道一本ではなく会社勤めも続けていましたが、大人向けの書道教室の講師を務めたり、書道師範学校に通いなおしたり、書に対して積極的な時期でした。

この「ぐるぐる」というテーマには、一言では表せない意味が込められています。人生はぐるぐるした「らせん階段」のようなものだと、中学生のころからずっと考えていました。良い時期もあれば、悪い時期もある。それで一喜一憂することもあるけれど、人生はらせん階段のように必ず上にのぼっていく。上に行くに従って自分の目線も上がっていき、俯瞰した高さから物事を見られるようになる。悪い時期に差し掛かっても、以前にそれを乗り越えた自分がいるんだから大丈夫、そう思えるようになる。「ぐるぐる回る=人生を生きること」、そんな思いを込めて作品を作りました。

<個展紹介文より>—————————

人生はらせん階段をのぼるようなもの。

へこんでも泣きそうになっても

こうして人生を楽しみながら生きていられるのは,

小さい頃から何度も繰り返し聞いた

「人生に無駄なことなんかひとつもないのよ」

という母のコトバがあるからだ。

いいことばかりじゃないし

わるいことばかりでもない。

ぐるぐるぐるぐるいったりきたり

しているように思えるけれど、

一回りしたとき、

見える景色は違っている。

より多くのことが見えるようになっている。

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作品紹介

書家  平野燿華さんインタビュー「筆と墨で心を表現する」第2回(連載全4回)

「縁」

メタリック墨は書いた部分だけに色がつき、滲んだところは黒くなります。
ぐるぐるとつながっていくご縁のその先が、あっちこっちでまた新しいご縁を生むといいなと、線の方向を変えたり伸ばしてみたりしました。

書家  平野燿華さんインタビュー「筆と墨で心を表現する」第2回(連載全4回)

「色」

愛妻家で有名な、ある建築家に、良き夫婦である秘訣を聞いたときのこと。「お互い惹かれ合って結婚したのだから、ふたりが見ている色はまったく同じ色だと当初は思っている。けれども、たとえば同じ赤だったとしても、お互いが見ている赤が本当は違う色だということに、少しずつ気がついていく。それを受け入れるのか責めるかの違いが大きいのではないですか」と彼は言いました。

そのとき彼が言った「色」というのは、性分や好きなこと、考え方などを指しているのだと思いますが、その言葉にインスピレーションを受けて生まれたのがこの作品です。「色」という字の旧字体で、一枚の中にさまざまな表情の線や濃淡の異なる墨を入れ、「色=人の多彩さ」を表しました。

本当に気に入っている作品のひとつですが、宮城県の実家に保管していたため、東日本大震災のときに津波で流されてしまいました。いつか復刻版として蘇らせたいと思っています。

3回目の個展は「ムコトバの世界」。その紹介の前に、私の海との思い出をお話ししないといけませんね。

(続く)

3回目の個展「ムコトバの世界」は、東日本大震災の翌年に開かれました。宮城県南三陸町で生まれ育った平野さんの辛さは想像に難くありません。私も東北の沿岸地域を震災後に一度訪れたことがあります。一度が限界でした。平野さんのお話を聞いているだけで、情景がはっきりと思い浮かび胸が痛みました。

3回目の個展には、海への思いが強く表れています。この個展のお話の前に、平野さんと南三陸町、そして海のことを、次回の連載でお届けします。平野さんの幼少時代を覗くことで、海と故郷への思いが伝わってきます。

書展〜時〜

平野燿華 書展 〜時〜

2016年9月10日(土)〜10月2日(日)
10:00-18:00(初日のみ 12:00〜)
当日、平野さんがラベルロゴを担当された「おら酒 風神」も召し上がれます。

書家  平野燿華さんインタビュー「筆と墨で心を表現する」第2回(連載全4回)

【平野燿華さんプロフィール】

 

宮城県南三陸町出身。大倫書道会師範、日本教育書道藝術院師範科卒。6歳から書道をはじめ、22歳で師範を取得。大学卒業後、ドイツに留学し、勉学の傍ら大学や専門学校で書道講師を務める。帰国後、特許事務所に勤務した後に書家として独立。

ワークショップ 開催情報

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9月11日(日)
敬老の日のためのカード作り
★詳細はこちら
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伝えたい言葉を燿華さんが筆でしたためてくださいます。様々な色の台紙にシールなどで飾り付けをし、オリジナリティあふれるカードを作成しませんか?9月19日(月)の「敬老の日」の贈り物にもぴったりです。

*開催日時:9月11日(日)11:00〜16:00 時間中随時開催
*所要時間:30分
*参加費:1,500円(おやつ付き)

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9月22日(木・祝)
オリジナル年賀状を作ろう、筆で書こう!
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2017年、平成29年の干支は「酉」です。人に時を知らせるとりは「とりこむ」として商売などに縁起の良い干支であり、また「酉」は果実が成熟の極限に達した状態を表しているとも言われています。
来年が実り多き年となるように、「酉」の漢字の持つ意味に思いをのせて、来年の年賀状を書いてみましょう!

*開催日時:9月22日(木・祝)10:30〜12:00
*定員:8名
*参加費:3,000円(ドリンク付き)

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9月22日(木・祝)
ひらがなのルーツから学ぶペン字講座
「名前をひらがなで上品に書こう」
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日本人が使う三種類の文字(漢字、カタカナ、ひらがな)の中で一番最初に習うのが「ひらがな」ですが、書く上で一番バランスがとりづらいのも「ひらがな」だったりします。
この講座では、「ひらがな」がどうやってできたかを知り、上品に書くためのコツをお伝えします。
特にお子さんの名前を「ひらがな」で書くことの多い方や、お子さんに「ひらがな」の書き方を自信をもって教えたい方にもオススメです。

*開催日時:9月22日(木・祝)14:00〜16:00
*定員:8名
*参加費:3,000円(ドリンク付き)

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