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Columnin the Roughの思いや活動をコラムで綴ります

書家 平野燿華さんインタビュー「筆と墨で心を表現する」第1回(連載全4回)

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書家  平野燿華さんインタビュー「筆と墨で心を表現する」第1回(連載全4回)

In the Roughでは9月10日より10月2日まで、平野燿華さんの個展「時(とき)」を開催します。その独特な書は見る人の想像を超え、ある人からは「今までにない」「書道というより絵画」「墨のアーティスト」という感想が出るほど。海沿いの町で過ごした幼少期、ドイツ留学、東日本大震災、様々な思いを抱えながら、現在の平野燿華になった経緯や書に向き合う姿勢を伺いました。

【平野燿華さんプロフィール】

宮城県南三陸町出身。大倫書道会師範、日本教育書道藝術院師範科卒。6歳から書道をはじめ、22歳で師範を取得。大学卒業後、ドイツに留学し、勉学の傍ら大学や専門学校で書道講師を務める。帰国後、特許事務所に勤務した後に書家として独立。

お手本がないと書けない――私の表現が始まった瞬間

ドイツ留学中に、ドイツ人の友人から「インテリアとして書を飾りたい」とよく言われました。書いてあげたいと思い筆を取ろうとしたところ、そのときになって初めて、自分にはお部屋に飾れるような書が作れないことに気づいたんです。6歳から書道を始めて15年間、ずっと先生のお手本を見て書いてきたので、自分の書というものを書いたことがなかったんですね。
その現状に愕然として、留学中は「自分自身の中から出てくる想いを表現がすること」にエネルギーを注ぎ込みました。段ボール紙に自作の詩を筆で書いて過ごしたりもしました。
ドイツでも書道を広めたいと、大学の日本語学科や美術専門学校で、日本が大好きな学生に書道を教えていたこともあります。ドイツにも「Kalligraphie(カリグラフィー )」はありますが、日本独特の文化である「Japanische Kalligraphie(日本のカリグラフィー =書道)」はあまり知られていなかったのです。書道をお互いに深められる機会を逃さないよう、放課後や授業の合間も積極的に動きました。「自分を講師として使って」と売り込みに行ったり、書の専門用語のドイツ語訳を友人に確認したり、今では考えられないくらいパワフルな生活でした。
ここが、私の書道への転換点だったと思います。お手本から飛び出して、自分の思いを表現する書にシフトした時期です。

書家  平野燿華さんインタビュー「筆と墨で心を表現する」第1回(連載全4回)

「おばちゃんよくわからないけど、この書なんだかカッコいいね」

書道の良し悪しはよく分からない、という方も多いと思います。書道を習っていたという方でもそういう方は多いんですよ。だけど、私が大事にしているのは、この「響」という書をおばが見たときに言った、「おばちゃん、よくわからないけど、なんだかかっこいいね」という言葉です。書道をやったことがないから分からない、けれどもなんか好き。見る人のその気持ちを大切にした作品を書いていきたいですね。

書道に関しては、「読めなくてわからないけど、えらい人が書いたというのだからすごいらしい」というような話を聞くこともありますが、私自身は「好きだから好き。かっこいいと思う」と、歌や絵のように、もっとラフに感想を言ってもらえるようになりたいなと思います。私の中から湧き出た感情を筆で表現して、見る人も素直に感情移入できる。そんな作品を創り続けたいです。

書の三大コンセプト

私には、常々大切にしている「書の三大コンセプト」があります。
1、手と心の表現のパイプをクリアにすること。
2、筆は最強の文房具であること。
3、味覚以外の四感をフルにつかって紙に向かうこと。

手と心の表現のパイプをクリアにすること

表現者として、手と心が繋がっているということは非常に大切にしています。感じたこと(心)をそのまま筆(手)で表現することは、難しいことでもありますが、納得のいくものが書けるときというのは、手と心の間にあるパイプを実際に何かが通っていくような感覚があります。
私の場合、筆を持って硯の前に座ったからといって、すぐに書けるとは限らないですね。「書きたい」という強い衝動のようなものが必要なんです。自分が見たこと、自分が聴いたこと、自分が触れたものが自分のフィルターを透過したとき、作品を書こうという気持ちになります。

筆は最強の文房具であること

私達は便利なものが大好きですよね。大昔から比べたら私たちの生活は格段に便利になったと思います。私自身、スマホやパソコンがないと仕事は成り立たないですし。筆記用具自体も毛筆から鉛筆、シャープペンと、どんどん便利なものに移り変わり、さらにはタイプ、音声だけでパソコンに文字入力ができるようになりました。そんな現代において、日々の記録や書類作成の道具として書道を使う人は皆無でしょう。まあ、使うたびに筆を洗ったり硯をきれいにしたり、書いたものを乾かしておくのが億劫という気持ちも正直わかります。
でも、たった一本の筆で表せる線は無限です。太さも、シャープペンのようにその芯の直径を変えなくても、自分の手の力加減によって自由自在に変わります。こんな素晴らしく多彩な線を出せる筆記用具は見たことがないです。だからこそ、使い手の力量が試され、書にかかわる人は書に魅せられ、死ぬまで書き続けるのかもしれませんね。

味覚以外の四感をフルにつかって紙に向かうこと

書でいう味覚以外の四感というのは、墨が水にとけていく様子や書いた線を「見る」こと、墨の香りを「嗅ぐ」こと、紙を滑る筆の音や墨を摺る音を「聞く」こと、筆が紙に食いついたり離れたりするその「感触を感じる」こと。
私は単純にこの感覚が好きということもありますが、書いているときにこれらを感覚を研ぎ澄ませることで、自分と向き合って心を無にする時間となり、さらにもっと書きたい、もっと書きたいと、どんどんと集中力が高まっていきます。
忙しい日常の中で紙に向かうときは、なかなかこの境地まではいけないこともあります。ですが、自分が特に好きな作品たちは、不思議と、「いつ書いたんだろう」とか、「どんなコンセプト持ってたかわからないけど、書いていたらできてしまった」ということが多かったりします。集中していたということなのかもしれませんね。

(続く)

次回は平野さんの作品とそこに込めた思いを見ていきます。

インタビュー時、平野さんの言葉を丁寧に選んで話す姿が印象的でした。質問の後に流れる数秒間の静かな間から、適切な言葉を選んで語っているのだとはっきり分かりました。筆で言葉を紡ぐお仕事をしているからこそ、言葉のニュアンス一つで自分の思いが伝わるか伝わらないか知っているのでしょう。まさに表現者です。
自分の心の声を表現する書は、作品の裏側にストーリーや思いがあります。「個展はその思いをお客様に直接話せる場だから好き」と平野さん。9月の個展では、新作と共にどんなお話が聞けるでしょうか。
次回記事は、今までに開催された3回の個展の作品と思いを見ていきます。第2回の個展タイトルは「ぐるぐる」。果たしてこの4文字にどんな思いが込められ、どんな作品が展示されたのでしょうか。初めて聞いたとき、私の頭の中にソフトクリームの渦巻く様子が浮かんだのはここだけの話。

 

→第2回「筆と墨で心を表現する」コラムへ

書展〜時〜

平野燿華 書展 〜時〜

2016年9月10日(土)〜10月2日(日)
10:00-18:00(初日のみ 12:00〜)
当日、平野さんがラベルロゴを担当された「おら酒 風神」も召し上がれます。

ワークショップ 開催情報

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9月11日(日)
敬老の日のためのカード作り
★詳細はこちら
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伝えたい言葉を燿華さんが筆でしたためてくださいます。様々な色の台紙にシールなどで飾り付けをし、オリジナリティあふれるカードを作成しませんか?9月19日(月)の「敬老の日」の贈り物にもぴったりです。

*開催日時:9月11日(日)11:00〜16:00 時間中随時開催
*所要時間:30分
*参加費:1,500円(おやつ付き)

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9月22日(木・祝)
オリジナル年賀状を作ろう、筆で書こう!
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2017年、平成29年の干支は「酉」です。人に時を知らせるとりは「とりこむ」として商売などに縁起の良い干支であり、また「酉」は果実が成熟の極限に達した状態を表しているとも言われています。
来年が実り多き年となるように、「酉」の漢字の持つ意味に思いをのせて、来年の年賀状を書いてみましょう!

*開催日時:9月22日(木・祝)10:30〜12:00
*定員:8名
*参加費:3,000円(ドリンク付き)

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9月22日(木・祝)
ひらがなのルーツから学ぶペン字講座
「名前をひらがなで上品に書こう」
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日本人が使う三種類の文字(漢字、カタカナ、ひらがな)の中で一番最初に習うのが「ひらがな」ですが、書く上で一番バランスがとりづらいのも「ひらがな」だったりします。
この講座では、「ひらがな」がどうやってできたかを知り、上品に書くためのコツをお伝えします。
特にお子さんの名前を「ひらがな」で書くことの多い方や、お子さんに「ひらがな」の書き方を自信をもって教えたい方にもオススメです。

*開催日時:9月22日(木・祝)14:00〜16:00
*定員:8名
*参加費:3,000円(ドリンク付き)

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